お盆の前夜

家の記憶

祖父母の家は、畳の部屋が多い家だった。
母屋は、応接間と台所以外はすべて和室だった。

夜になると家はとても静かになった。
曽祖父母や祖父母には遅くまで起きている習慣がなく、夕食を終えて片付けるとそれぞれの個室に戻った。
伯母夫婦も離れにある自室へ戻るので、台所には人の気配がなくなる。

子供のころ、お盆で親戚たちが集まる前日に何度か一人で泊まったことがあった。

私が泊まった夜、祖母は外廊下と台所の間にある二間続きの和室、その仏間のほうに布団を二つ敷いた。
もう一つの布団には従姉妹が寝た。従姉妹は離れに自分の部屋があるのに、私が一人では寂しいだろうと、いつも一緒に寝てくれた。

昼間は田んぼのあぜ道を歩いたり、庭で遊んだりして、くたくたになるまで遊んでいた。
だから布団に入ると、二人ともすぐ眠ってしまう。

夜中に和室から話し声がするので祖父が覗きに来たことがあった。
並んで寝ている私と従姉妹が、それぞれ寝言を言っていたらしい。

朝になると祖父が笑いながらその話をしてくれた。

祖父母の家に泊まる日は、両親と小さな弟は家に帰って、翌日の朝またやってきた。昼を過ぎると親戚たちが集まってきて、賑やかなお盆の食事が始まる。

たくさんの親戚が入れ替わり立ち替わり訪れ、よく知っている顔や、よく知らない顔もあった。

お盆の日は、夜に盆踊りに行くために、曽祖母がひ孫達全員に浴衣を用意していてくれた。泊まる夜は翌日の賑やかさや盆踊りを楽しみに眠りについていた。

ある年のこと、朝目覚めると、たくさんの親戚達が右往左往していて、私は一人で布団ごと和室の隅に移動させられていた。こんな光景は初めてだった。

「起きたの?」と親戚に声をかけられて、うなずくと、母がやってきて、早朝に曽祖父が亡くなったことを告げた。

後になって、どす黒い血をたくさん吐いたのだと聞いた。

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