子どもたちが、薄暗くなった芝生の庭で時間をつぶしていると、
さっきは「入ってもいいですか」と聞いた私たちに「だめ」と言った年長の従姉妹がやってきた。
「入っておいで」
その声で子どもたちは、またぞろぞろと渡り廊下を通り、
年長の従姉妹の部屋へ移動した。
気が強く、スポーツも勉強も万能で、いつも活発な従姉妹。
その部屋は伯母の趣味によって、少女趣味に整えられていた。
壁一面の作り付けの収納。
白地に落ち着いた花柄の壁紙。
足元にはベージュのカーペット。
子どもっぽくない落ち着いた机と、白いレザーのフランスベッド。
白いベッドサイドテーブルとドレッサー。
この優雅な部屋に、私は憧れていた。
部屋に入ると、年長の従姉妹は私たちの前に紙で作った箱を差し出した。
中には、四角に畳んだ紙が年長の従姉妹を除いた人数分入っていた。
それを一枚ずつ取って開く。
私の紙には、
「二つの小さな実」
と書かれていた。
他の子たちの紙には、それぞれ違う言葉が書かれている。
どうやら、その言葉に当てはまるものを
敷地の中から探してくる宝探しゲームらしかった。
私たちはまた庭に戻った。
もうすっかり暗くなってしまった庭で、
私は「二つの小さな実」を探した。
それが何なのか見当もつかない。
日本庭園の大きな石の上。
つくばいの中。
芝生の庭の端にある池のまわりの石。
裏庭の物干し台。
思いつくところを、くまなく探した。
疲れ切ったころ、
玄関の横の「おつぼ」の中にある石灯籠の中で、
紫の小さな実が二つ置かれているのを見つけた。
私はその紫の実を握って、
年長の従姉妹の部屋へ戻った。
まだ、ほかの子どもたちは戻っていない。
しばらくすると、小さな従姉妹たちが次々に帰ってきた。
年長の従姉妹は「賞品」と言って、
それぞれに鉛筆や消しゴム、ノートなどを渡した。
宝探しゲームに一番に戻った私には、
特別に陶器でできた二つの白い天使の像をくれた。
その天使の像は、
従姉妹の部屋のベッドサイドテーブルにずっと飾られていたものだった。
私はあの像を、よくじっと眺めていた。
天使を渡すとき、
従姉妹は少しムッとした顔をしていたと思う。
従姉妹は、
恥ずかしいときや嬉しいとき、
わざとムッとした顔や真面目くさった顔をする癖があった。
きっと、私が喜ぶと思って、
とっておきの天使をくれたのだと思う。
二つの天使は、
私が結婚して家を出るまで、
自分の部屋に飾っていた。
今も実家のどこかに、
残っているだろう。
従姉妹の部屋でお化け屋敷ごっこをしたこともあった。
部屋を暗くして、入口にはビニールテープのようなものが張られ、
入ってきた人の顔に触れる仕掛けが作られていた。
図工の時間に作った手の工作に、
デスクライトを下から当てて、不気味さを演出する。
ベッドの陰から従姉妹が飛び出してきて、脅かす。
その従姉妹は、口にケチャップをつけて「血」のように見せていた。
小学生としてはかなり力の入った、本格的な“お化け屋敷”だったと思う。
けれど部屋に入った瞬間、
ケチャップの匂いがふわっと広がっていて、
口元を赤くした従姉妹を見た途端、私は笑いが止まらなくなった。
怖いはずの仕掛けも、全部が一気に“作り物”に見えてしまった。
私の人生で、一番楽しかったお化け屋敷だった。

