茶道では11月の炉開きは茶人の正月だと言って、非常に重要な時期である。
その炉開きの時に決まっていただくお菓子があって、それは「亥の子餅」という。
お菓子屋さんによって、色々と工夫されていて違いもあるのだが、小豆を練り込んだ薄い小豆色の餅の中に餡が入っているタイプの「亥の子餅」が一番多いのではないだろうか。
私が通っている稽古場でお願いしている「亥の子餅」がそんなタイプの餅で、表面の薄く3本の線の焼印が押されていて、「うりぼう」に見立てられている。
小さな「うりぼう」のお菓子は、シンプルな美味しさがあり、それは炉開きの楽しみの一つでもある。
一度、地元で有名なお菓子屋さんの「亥の子餅」で、木の実と胡麻が練り込まれた香ばしい「亥の子餅」をいただいたことがある。思わず、顔がほころぶ美味しさだった。
私が茶道に入門したのは10年以上も前の10月だった。その一ヶ月後に初めて「亥の子餅」を食べたのだが、私は「亥の子餅」を食べたことはなく、お菓子として現代に存在していることも知らなかった。
私にとって「亥の子餅」とは、遠い昔に源氏物語の中に出てきた餅であった。
平安時代の貴族や姫君たちが食べていた「亥の子餅」が現代にあるなんて。もちろん、平安時代のお餅とは全然違っているだろうが、平安時代と同じように縁起物として受け継がれているなんて。
私は密かに感動して、「亥の子餅」をいただいた。
茶道の楽しみは色々あるが、時々、日本史や古典とふわっと繋がることもあって、学生時代に日本史と古典が好きだった私はこっそりと一人で喜んでいる。

