外廊下から見た世界

家の記憶

玄関を入って右に曲がると、静かで薄暗い内廊下があった。

内廊下の左側には隠居部屋がある。
曽祖母はそこにいて、着物姿で寝そべってくつろいでいることが多かった。

祖父母の家に来るとまず隠居部屋を開け、曽祖母に挨拶をする。
それから廊下を奥へと進む。

内廊下はいつも静かだった。
歩くと、足音だけが板の床に小さく響く。

廊下の先のガラスの引き戸を開けると、そこには台所があった。

台所にはいつも祖母がいて、料理をしている。
振り返って、顔中シワをいっぱいにして笑う。

右側にある仏間では、いつも曽祖父が黒い着物を着て台所の方を向いて座っていた。

私が顔を出すと、口元が少しゆるむ。

来たな。

そんな顔をして、ニヤリとする。

曽祖父はいつも台所の方を向いて座っていた。
親戚がやって来るのを待っているのだ。

祖父は台所の隣の小さな和室でテレビを見ていることが多かった。
言葉は少ない人だったけれど、とてもハンサムで、優しい人だった。

家の外側には、明るい外廊下があった。

ガラス戸はたいてい開けられていて、網戸になっている。
日本庭園の方から、澄んだ風が家の中を通り抜けていった。

庭には大きな石と木々があり、手を洗う石も置かれていた。
日本庭園の外側には、広い芝生の庭が広がっている。

季節によって、雨戸は取り替えられるのだが、夏用の雨戸は下側がルーバーになっており、風が通るようになっていた。

夏の夜は雨戸を閉めて、内側のガラス戸を開けておく。
そうすると夜の涼しい風が入ってきた。

祖父母の家は一人のみや大工さんが一年ほどかけて一人で建てた家だった。

個室の壁面収納のクローゼットや引き出し、L字型のキッチンの吊り戸棚や収納、和室の欄干の彫刻に至るまでその宮大工さんが一人で作ったものだ。雨戸も木製の手作りだった。

もう、そのような仕事をしてくれる人は難しくなり、木製だった玄関の引き戸やサッシもアルミ製になった。

しかし、風のとおる雨戸は今も夏に使われているだろう。

外廊下は明るい色の木でできていた。

朝になると、従姉妹が雑巾がけをしていた。
子どものころから毎日続けている仕事で、学校のある日も欠かさなかった。

廊下は和室二部屋分の長さがある。
拭き終わるころには、光がきれいに反射していた。

昼の祖父母の家は、少し薄暗い。
でも外廊下だけは、いつも光がたくさん入って明るかった。

内廊下の足音。
台所の話し声。
庭から聞こえる虫の声。

法事の日には、和室からお坊さんの読経が聞こえてくる。

親戚たちが集まると、
ダイニングテーブルに座っているところへ
内廊下から足音と話し声が近づいてくる。

みんながやって来る音だ。

親戚ではない人は、門で呼び鈴を鳴らして名乗る。

その声が聞こえると、私は外廊下へ走った。

庭と門がよく見える場所がある。
そこから来た人を見るのが好きだった。

たいてい、知らない人だった。

それでも私は、そこに立って庭を見ていた。

子どもの私は、
あの外廊下から世界を見ていた。

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