まだまだ蒸し暑い日が続いているが、
和菓子の世界ではすっかり秋である。
秋のお菓子の銘で時々見かけるのが、山苞(やまづと)
苞(づと)とは、もともとは物を運ぶために包んだ物であるが、
転じて、旅先から持ち帰った品、土産を意味するようになった。
山苞(やまづと)は、秋の山の果実や、栗などのイメージで、
栗を使ったお菓子や、柿の形を模したこなし※などに付けられることが多いようだ。
こなし※ 白漉餡に小麦粉などの粉類を加えて蒸し、よく揉み込んで作る上生菓子の生地(およびそれを使ったお菓子)
私が柿を模したこなしのお菓子を初めて頂いたのは、高校生の頃だった。
茶道をやっていた伯母が、お茶を点て、
和菓子をふるまってくれたのだった。
正月やお盆に宴会が行われる二間続きの和室の片方に、
緋毛氈が敷かれていて、畳の一部に穴が空いていて、鉄の釜がかすかな音を立てていた。
同じくお茶をやっている叔母を先頭に、言われるがままに叔母の真似をして、部屋に入り、何をやっているかわからないまま、掛け軸や花を見たり、
窯や道具を見たりしてから、やっと緋毛氈の上の席についた。
それから、着物を着た伯母が入ってきて、
私たちの前に柿の和菓子を置いた。
そのお菓子は鮮やかなオレンジ色でむっちりとした柿の形をしていた。
なんて可愛いお菓子なんだろう!
伯母と叔母は、いつもと全然違うよそ行きの言葉で
静かに会話を続けていた。
伯母の娘である一番年上の従姉妹は作法を知っているようだった。
落ち着いて慣れた様子で、やり方を教えてくれたが、
私はそれに従いつつも、自分が何をやっているかさっぱりわかっていなかった。
伯母たちは微笑みながら、「好きなようにしていいのよ。でも、お菓子を先に全部いただいてね」と言った。
こんなに大きな和菓子を飲み物なしで食べるとは!と内心驚いた。
そのころは今よりももっと和菓子の一つ一つが大きかったように思う。
飲み物があればもっと美味しいのに、と思いながらお菓子を食べ切った覚えがある。
そして今、茶道をやっている私は当たり前のように、お菓子をいただいてから、お茶を頂く。
秋になると、柿の形のお菓子が出てくることがある。
そんな時はいつも、私の生まれて初めてのお茶会を思い出す。
伯母がふるまってくれた柿の形のお菓子の鮮やかなオレンジ色、
畳の上に敷かれた緋毛氈の深い赤。
戸惑いながらも美味しくいただいたお菓子の甘い味。


