わらび餅の季節といえば、夏だろうか。
冷蔵庫で冷やしたわらび餅を食べる美味しさ。家族の中には黒蜜をかけた方がより美味しいという者もいるが、私は黒蜜はかけずにそのまま食べるのが大好き。
わらび餅本来の繊細な味ときな粉のハーモニーを味わうのが好きなのである。もちろん、黒蜜をかけても美味しいことには変わりないのだけれど。
夏になると店頭に並ぶプルプルとしたわらび餅とは別に、和菓子屋で販売されているお茶席用のわらび餅というのがある。
たいてい、中にこし餡が入っていて、周囲を葛で包んだものを蒸し、きなこがまぶしてある。これが本当に美味しい。茶道と関係なく、手土産や家でのお茶請けにも喜ばれるのではないだろうか。
ただ、本当はこのタイプはお茶席にはあまり向かない。きなこが散って、畳掃除が大変になるからだ。
もし、このタイプのわらび餅を大寄せの茶席で使おうものなら、お客様はつるりとした喉越しを楽しめるだろうが、亭主側は掃除が大変。
お客様たちが退席したら、次のお客様の着物を汚さないように、コロコロ地獄である。ひたすら目を凝らして、きなこの取り残しがないか、畳を睨みながら、コロコロで畳を掃除しなくてはいけない。
近くの和菓子屋のわらび餅が変わった。
なんと、きなこをまぶさずに、葛に練り込んであるようだ。とある茶人がわらび餅はきなこが飛び散るから茶席で使いにくいと意見をしたようで、店主が工夫をしたようなのだ。
確かに、これだときなこは飛ばない。でも、きな粉好きな私はがっかりした。
それまで、その店で家族と食べるために時々わらび餅を買っていたが、買わなくなった。私好みのわらび餅ではなくなったからだ。
普段に楽しみとして食べる和菓子とお茶席に向いている和菓子は違う。
作ってあまり時間が経ってない羽二重もちを買った時、家でおやつとして食べる分にはラッキーだ。柔らかい美味しさを堪能できる。
しかし、お茶席だと、菓子切りで切ろうとしても餅が絡みついてきて切れず、手でちぎろうとしても手に餅が付いてきて困る。
私はそういう時はお行儀が悪いのだが、こっそりと大口で二口くらいでさっさと食べてしまう。四つに切り分けたりしたら、私の場合は大惨事になってしまうのがわかっているからだ。だけど、この美味しいお餅を家でゆっくり食べれたら、もっと美味しかっただろうなぁ、もったいないなぁと思ってしまう。
近所のわらび餅も、そういう意味では美味しいけれど、お茶席ではちょっと困るタイプのお菓子だった。でも、私は美味しいあのわらび餅がまた食べたいなぁと思いながら店の前を通っている。

