祖父母の家の庭に「おつぼ」と呼ばれる場所があった。
それは「坪庭」とも違って、庭の一部に一抱えくらいの大きさの石を並べて囲い、中に土をもって、植栽した場所であった。ほとんどが木で、花などはあまり植えられてなかったように思う。祖父母家はそこに石の灯籠も置かれていて、宝探しごっこの時はその灯籠に小さな実が置いてあった。
私の実家の庭にも「おつぼ」はあり、背の高い木やツツジなどが植えられていた。木専用の花壇みたいなものと言ったところだろうか。
花壇と違うのは、カジュアルな場所ではなく、大切な場所として扱われていたところだ。小さい頃、庭のあちこちで遊んだが、「おつぼ」には基本的に入ってはいけなかった。
「おつぼ」に入るのは手入れをするときくらいで、そこでかくれんぼをしたりはなかった。
私の実家の猫が死んだとき、母は可愛がっていた猫をお骨にしてもらってから、「おつぼ」の中のピンクの花が咲くツツジの根元に小さな墓を作った。墓石がわりに私が中学世の頃に友達から誕生日プレゼントにもらったが、使わないまま飾っていた陶器でできた猫の貯金箱を、母はツツジの下に置いた。陶器の猫と死んだ猫の毛の色が少し似ていた。
猫の墓の場所を「おつぼ」に選んだ理由は、まずほとんど人が足を踏み入れないこと。そして、猫が生前ピンクのツツジの下でよく昼寝をしていたこと。
今思えば、人があまり来ないツツジの陰で猫はよく寝たり、毛並みを整えたりしていた。リラックスできる場所だったのだろう。
私は長い間「おつぼ」という言い方は珍しくないものかと思っていた。方言や地域限定かもしれないが、庭に「おつぼ」がある、それは普通のことかと思っていた。しかし、友達の家で「おつぼ」を見たことがない。祖父母の家と自分の家、親戚の家だけだ。
検索してもヒットしない。親戚内で使ってた言い方だったのかもしれない。
ちょっと面白く思ったのでここに記しておく。

