着物の記憶 ②浴衣と鎮魂の小さな盆踊り

着物の記憶

子どもの頃、毎年お盆になると母方に実家に行った。まだ元気だった曽祖母が曽孫全員分の浴衣の支度をして待っていてくれた。

母方の実家に着いたら用意された自分用の浴衣に着替え、家紋が入った大きな提灯を下げて、仏様をお迎えに行く。

夜になったら一番のお楽しみ、盆踊り。近所の社務所で行われるその盆踊りは規模も小さく、露店も一つしか出てなかったように記憶している。

しかもその唯一の露店も母方の実家の買い食い禁止というルールにより買い物はできなかった。

しかしその小さな盆踊りは、私の小学校で行われる賑やかな盆踊りに比べて幻想的で美しく感じたものだった。

数年後の夏に元気だった曽祖父が急逝した。

翌年の盆踊りの夜、浴衣を着た地元の小学六年生の子どもが数人母方の実家にやってきて盆踊りを静かに二曲踊って帰っていった。

死者の魂を鎮めるために初盆に子どもが庭で踊るのだと大人が説明した。私は静かな盆踊りをじっと見ていた。

あれから随分と月日が流れたが、カセットデッキから流れる盆踊りの曲だけが響く暗い庭で円になって踊る静かで小さな盆踊り。

今でも鮮明に覚えている。

コメント

タイトルとURLをコピーしました